仙台高等裁判所 昭和53年(行コ)8号 判決 1979年5月28日
青森市大字野内字浦島一一〇番地
控訴人
山田林業株式会社
右代表者代表取締役
山田重一
同市本町一丁目六番五号
被控訴人
青森税務署長
大塚為八郎
右指定代理人
笠原嘉人
同
千葉嘉昭
遠藤健一
鈴木徹
山田昇
渋谷典男
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人は「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対し、昭和五一年六月三〇日付でした控訴人の昭和五〇年二月一日から昭和五一年一月三一日までの事業年度分法人税の更正の請求に対する、更正をすべき理由がない旨の処分はこれを取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張は、左記のほか原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。
(控訴人の陳述)
控訴人が本件土地を他に売却したのは、騒音規制地域内である青森市大字原別字上海原一七一の土地上に控訴人が所有する騒音発生施設たる製材工場を他へ移転し、もって騒音公害の発生を除去すべく、右移転先の土地購入及びその開発に必要な資金捻出のためにこれを売却したのであるが、売却の目的が右のようなものであることのほか、本件土地がもともと右製材工場の土場(貯木場)として使用され約八〇〇メートルの距離(車で約五分)しかなく、貯木にかかる丸太を必要の都度右製材工場に運搬して製材していたものであって、土場(貯木場)は製材工場にとって不可欠な存在であり、両者はいわば主従の関係にある一物と考えられるのであり、かかる利用方法及び前記売却目的に徴するときは、主たる右製材工場が騒音規制地域内にある騒音発生施設である以上、従たる本件土地が騒音規制地域内になく地上に騒音発生施設が存したのでもなくとも、本件土地の譲渡利益の課税については租税特別措置法六五条の七第一項の表の三号に規定する「騒音規制地域内にある特定資産の買換えの場合の課税の特例」の規定を拡大解釈して課税上の特例を認めるべきである。
(証拠関係)
控訴人は甲第一ないし第八号証、第九号証の一、二、第一〇ないし第一七号証、第一八号証の一ないし三、第一九ないし第二一号証、第二二号証の一、二、第二三号証の一ないし三を提出し、第二二号証の一、二はいずれも控訴会社野内貯木場を昭和五二年八月一〇日に撮影した写真である旨附陳し、原審及び当審における控訴会社代表者本人尋問の結果を援用し、被控訴人は甲第一、第三号証はいずれも原本の存在及び成立を認める、同第二、第四、第五、第八、第一〇、第一一及び第一三号証、第九号証の一、第二三号証の一ないし三はいずれも成立を認める、同第九号証の二は加筆部分の成立は不知、その余の部分の成立は認める、同第一八号証の一は公印部分の成立は認めるがその余の部分の成立は不知、同第二二号証の一、二はそれが控訴人主張のような写真であることは不知、その余の甲号各証の成立はいずれも不知と述べた。
理由
当裁判所も控訴人の本訴請求は失当としてこれを棄却すべきものと判断する。その理由は左記のほか原判決の理由説示のとおりであるからこれを引用する。
一 原判決四枚目裏末行の「原告代表者」の次に「(原審)」を、同五枚目表一行目の「七号証」の次に「、当審における原告代表者本人尋問の結果により真正に成立したものと認めうる甲第二二号証」を、同行目の「原告代表者尋問」の次に「(原審及び当審)」をそれぞれ加える。
二 原判決五枚目表四行目の「字上海原一七一」を「字下海原一〇六番二及び同番三の所有地(もと控訴会社代表者山田重一個人の所有であったが、後述の売却に先立ち、控訴会社所有の他の土地と等価交換された。)約九九〇平方メートル並びにこれに隣接する同所一七一番四の借地約四九五平方メートル、合計約一四八五平方メートル」と改め、同枚目裏一行目の「本件土地」の次に「(実測約一三八八平方メートル)」を加え、同五行目の「一、九八〇坪」を「六五四五平方メートル(一九八〇坪)」と改め、同六行目の「買求め、」の次に「約二五〇〇万円の費用を投じて整地したうえ、」を加え、同行の「工場用地」を「工場及び土場の用地」と改め、同七行目の「約一、八〇〇坪」を「約五九五〇平方メートル(約一八〇〇坪)」と改める。
三 原判決六枚目表二行目冒頭から同四行目末尾までの記載を「(四)従前市内大字原別にあった工場のうち主な騒音発生源であった一棟は昭和五二年中に、残る一棟も昭和五三年中にそれぞれ大字野内字浦島の土地上に移転を了し控訴会社は同年八月二六日旧工場敷地たる所有地を代金二一〇〇万円で他に売却した。」と改める。
四 租税法規については租税法律主義の見地から、みだりに拡張解釈しまた縮小解釈することはいずれも許されないところである。
なるほど前顕各証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件土地は前示製材工場から約八〇〇メートルの距離(車で五分)にあり、右製材工場の敷地が手狭のため同所に貯木の場所を確保できないので、本件土地を右製材工場の土場(貯木場)として使用していたもので、本件土地は右製材工場にとって事業の遂行上いわば不可欠の存在であったものと認めることができるけれども、前記認定の諸事実にこれらの事情を併せ斟酌しても、騒音規制地域内になく地上に騒音発生施設が存したのでもない本件土地の譲渡について、それが租税特別措置法六五条の七第一項の表の三号上欄に掲げる資産を譲渡した場合に該当するものと拡張解釈することが許されないものであることは、右引用にかかる原判決の理由説示のとおりである。
よって原判決は相当であって本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大和勇美 裁判官 桜井敏雄 裁判官 渡辺公雄)